第373回『ポスト平成の精神世界の展望:オウムの特徴と顛末から予見』(2018年7月1日 東京 69min)
(2018年7月 2日)
1.オウムなどの平成の宗教潮流と今現在の精神世界の潮流
平成の終わりと共に、麻原死刑囚の執行などで、オウム真理教の幕が下りる。
オウムを初めとして、平成の宗教潮流の特徴の一つは、キリスト教保守主義や、イスラム原理主義などのように善悪の闘い=終末思想を反映していた。
それが、平成の終わりとともに、終末思想の流行は弱ると思われる。
一方、今現在、ヨーガ・マインドフルネス・禅のブームがあるが、これも、オウム真理教段階で見られた初期仏教・ヨーガの思想への回帰の潮流であり、この部分は、逆に日本・世界全体に勢いを増している。
2.オウム真理教の宗教的な特徴と今後残ると思われるもの
宗教学者の分析では、オウムはニューエージ系の思想である
インド思想を取り入れた欧米で始まった近代の神秘主義的な思想の流れ。
(1)悟り・解脱を説く初期仏教・インド本場のヨーガの思想を取り込んでいる。
仏を絶対者と見て幸福になろうとする日本仏教の主流(南無阿弥陀仏など)の易行の流れと異なり、初期仏教・ヨーガへの原点回帰の側面があった。
→これは、心の安定・ストレス解消という緩い目的ではあるが、今現在の
マインドフルネス・禅のブームにつながっている
(2)ハタヨーガ・クンダリニーヨーガ・チベット仏教などの霊的修行、
神秘体験を重視し、これとも関連して強いグルイズムがある。
日本伝統仏教はヨーガを密教の形で取り込んできたがクンダリニーヨーガ=インド後期仏教は(チベット仏教などと異なり)輸入しなかった。
→これは、今後適切に制御・相対化される必要がある。神秘体験・
宗教的な指導者の過大視・絶対視を避けなければならない。
(3)終末思想(最終戦争・キリスト再臨・最後の審判)などの未来観。
→これは今後、絶えないであろうが、平成の流行の反動として、ポスト平成は、相対的に弱まると思われる(破壊的であり、弱まっていくことが望ましい)。
(4)新人類思想(超人思想・ニーチェ、人類の進化・みずがめ座の時代)
悟り解脱と共に人類が進化するという思想。終末思想と結びつくと、ナチスやオウムのように新人類と旧人類との戦いの構図ができるが、本来人類全体の進化思想。
→これは、今後人類社会全体が科学技術により益々長寿化する可能性や、一部の高齢者に見られる「老年的超越」という新現象を踏まえれば、
長期的・現実的・科学的な現象として再解釈される可能性もある。
(5)様々な宗教思想を混合・混同している(万教帰一・真理は一つ)
例えば、キリスト再臨と弥勒菩薩の降誕と一つ見る思想。
中国の白蓮教などにも見られた。仏教本来の弥勒降誕の予言は、
人類の寿命が8万歳になる遠い未来のこと。
→オウムなどの平成の宗教の顛末・破綻に基づいて適切な整理が必要