第330回『初期仏教の思想の総覧:苦の解消の奥義とは』(2017年5月28日 東京 62min)
(2017年5月29日)
苦の解消・心の安定・世界の道理を悟った智恵(智慧)を目的とした、釈尊直説の初期仏教の思想を総覧して、そのエッセンスをピンポイント解説した講義です。
初期仏教の思想では、人は、1.実際には苦しみを招くものを喜びと錯覚する「無智」があり、2.そのために間違ったものにとらわれ(=「煩悩」)、3.さまざまな苦しみを経験し、その苦しみが更なる錯覚(無智)をもたらす、という悪循環に陥っているとします。
この悪循環を解消するために、1.正しい見方を学び(=「智慧」)、2.煩悩による日常の言動の悪習慣を抑制する規律(=「戒律」)を守り、3.心の安定と集中を高める瞑想(=「禅定」)を行うという良い循環を形成し、苦の解消を図ります。
この講義では、上記の中核の思想を軸として、それに関連した以下の点を講義して、初期仏教の思想と実践の全体像を明らかにしようとしています。
1.初期仏教の基本教義の紹介
中道・四諦・八正道・十二縁起・此縁性縁起・三学(戒・禅・慧)・止観といった基本教義とは
2.人の心の働きの根本の思想
1.全ての人が陥る錯覚(無智)=真理とは逆の物事の認識(顛倒(てんどう))とは何か
2.無智から生じる貪りと怒りの根本煩悩の仕組みとは:人の心の働きの根本の理解
3.仏教教義の理解の奥儀
1.仏教が説く苦(原語でドゥッカ)は、日本語の苦とは違う特殊な意味をもつこと
2.仏教思想の理解の3段階=1.知識、2.論理的な理解、3.直観智とは
3.すべての教え・思想が本質的には一つ・一体であること:仏教理解の奥儀。
4.仏教の瞑想のポイントの解説
座法、呼吸法、四念処、四無量心、象徴への集中、気に対する集中など