第390回『仏教思想の精髄:煩悩が苦の原因・慈悲が幸福の条件』(2018年12月9日 大阪 62min)
(2018年12月10日)
この講義は、苦の原因は煩悩という仏教の思想の精髄を詳細に解説したものである。
釈迦の中核の思想である四諦の教えは、人の苦しみの原因は、自己の能力の不足や、悪い他者や社会などでではなく、自分の内側の煩悩とする。そして、何を根拠にそう言い切れるかを理解することは、人間の苦の原因を深く分析し、苦を解消する重要なポイントである。
そのためには、
1.仏教用語としての「苦」(サンスクリット原語ではドゥッカ)の正確な意味、
2.人の苦しみを分類的に分析した「四苦八苦」の教え、
3.煩悩的な喜びがとらわれを増大せるために苦の原因を増やすとする「苦楽表裏」の教え、
4.煩悩的な喜びは、上に行くほど得ることが難しい構造があること、
5.煩悩的な喜びは、人生の先に行くほど得ることが難しい構造があること、
などを理解する必要がある。
更に、苦の原因には、内的な原因として、煩悩があり、外的な原因として、煩悩が満たされていない状態があるが、外的な原因を改善すると(=より煩悩を満たすと)、とらわれ=煩悩も増えて苦が減らないため、内的な原因=煩悩こそが真の苦の原因と解釈される。
講義の後半には、煩悩を追求する人生と、煩悩の対極である慈悲の実践を行う人生を比較して、①心の安定や苦に対する強さ、②健康・寿命、③人間関係、④知性、⑤自己実現や競争に勝つ能力などにおいて、どのような違いがあるかを詳しく解説している。