第230回『コンプレックスの苦しみを乗り越える。アドラーの心理学と、仏教心理学の唯識思想から(2015年2月15日大阪 94min)』
(2015年3月15日)
1.人のコンプレックスの苦しみは、人間関係の問題・破たん、鬱病等の精神病、さらには集団・国家のテロや戦争など、様々な問題の原因になっている。これは、西洋のアドラー心理学と、仏教の心理学である唯識思想の視点から分析する。
2.アドラー心理学から
劣等感とその解消が、人間の進歩の原動力でもあるが、うまっく解決できないと、歪んだ心理状態=コンプレックスとなり、他との人間関係に耐えられず、引きこもったり(劣等コンプレックス)、その真逆に、自分が優れているという妄想的な考えにのめり込む場合(優等コンプレックス、例えば反社会的なカルト集団の心理状態)がある。この問題に対対しては、劣等感を健全に解決する努力を勇気付けたり、何らかの共同体への所属・信頼・貢献によって、社会との健全なつながりを持つことが解決策となる。
3.仏教の心理学と家われる唯識思想から
仏教の唯識思想では、人間には、自と他が全く別ものだと錯覚し、自分に過剰に愛着し、自分こそが価値があると思いたいという煩悩がある。
そこで、優越感の罠に陥らないように、自分が優れていると思っても、それは自分の力(だけ)ではなく、他者・全体に支えられて与えられたものであるという謙虚かな認識を持つように努め、他者・全体に感謝に、自分の幸福を他者と分かち合うことが大切である。
また、劣等感の苦しみを乗り越えるためには、自分はダメだとか、自分だけが劣っているかのような意識に陥らずに、自分と同じような欠点を持った者は世界には無数に存在していることに気づき、その人たちの気持ちを理解し、苦しみを分かち合い、ともに乗り越えていこうと考えて慈悲を培うべきである。すると、欠点を慈悲の源になり、長所に変わっていく。
21世紀には、優越感と劣等感に揺れる乗り終えた、感謝と苦楽の分かち合いによる幸福という、「幸福観のパラダイムシフト」が必要である。