2018年12月
第392回『心の安定に役立つ生活環境:現代社会の孤独の問題』(2018年12月23日東京 62min) (2018年12月27日)
1.心の安定のための生活環境
(1)衣・食・住
①心の安定に役立つ住環境
1.整理整頓・換気が重要。
2.仏画などの象徴物・瞑想香・仏教法具の音の活用②心の制御に役立つ衣服
1.体を締め付けないもの。
2.身につけると良いもの:貴石・法具③心の制御のための食事
1.食べ過ぎ・冷たい物の摂りすぎに注意。気を強める物
2.肉食:煩悩が強まるがエネルギーは弱い。
3.菜食:煩悩は減少する(エネルギーは弱い)
4.酒:意志・行動の制御が難しい(熱・エネルギーは増える)
5.食事はバランスを考え、個人差を考慮する。④人間関係
1.心の制御を志す仲間・法友は重要
2.仏教の三宝のサンガ:仏道修行者の集い
2.現代社会の孤独の問題
(1)単身者の増大:まもなく4割の世帯に。
都市集中・核家族・晩婚化・離婚増など(2)社会的な繋がりが不足する日本人
家族(仕事)以外の人間関係=社会関係資本が不足
伝統の地縁血縁の家族親族や、家族的な会社の崩壊
近隣・社会団体・趣味での繋がりが薄い(3)長期的な孤独の害
精神の不安定:不機嫌・自己中心・攻撃的に
健康上の問題:酒・たばこ・肥満よりも健康に悪い
孤独死:年3万人第391回『どんな状況でも生きる意味を見出す心理療法「ロゴセラピー」と仏教の慈悲の思想』(2018年12月16日福岡 67min) (2018年12月16日)
1.ロゴセラピー
生きる意味を見失い、絶望している人に生きる意味を見出す援助をする心理療法
創始者:オーストリアの精神医学者、心理学者のヴィクトール・E・フランクル
ナチスの強制収容所生活を3年。父母・妻は強制収容所で死亡。2.生きる意味を発見する重要性
(1)生きる意味の喪失は、精神的病の原因で、意味を見出せば改善される。
(2)生きる意味の喪失は、現代社会・現代人全体に広がる病理
  現代の先進国社会では、大きな悩みはないが、虚無感がある人が多くなっている。
戦後は、物質的には豊かになったが、伝統的な価値感が崩壊したことも原因。3.どんな人も人生の意味を見出せる
(1)不幸な状況の中で幸福を感じている人もいる。受刑者、末期ガンの人など
(2)どんな状況の人でも生きる意味を手に入れることができることが研究で実証されている。
現実の中に埋もれている生きる意味を見出すことが重要
(3)苦しみが自分をよりよい自分に変えるなら、苦しみにも意味がある
自分自身を変えることは、自分自身を越えて成長することを意味する。
それは苦しい状況のときにこそ生じ、苦しい運命を引き受けるで生じる。4.生きる意味を見出せる3つの価値のカテゴリー
(1)創造価値:他の人たちに何かを提供しているという価値
(2)体験価値:自然や芸術、人との交流によって得られる喜びや感動による価値
(3)態度価値:どんな苦境でも、その人の心・態度次第で得られる価値。
思いやりや愛など高潔な態度によって得られる価値である。
自己超越・自己離脱の性質を持つ。5.態度価値の実例
(1)医師のフランクルを労った強制収容所の末期がん患者の男性
(2)フランクルが末期癌となった看護婦に諭したこと
(3)フランクルの教えを学んで生きる意味に初めて目覚めた死刑囚
(4)苦しみの連続の生涯から生まれた慈悲の化身・観音菩薩の説話
(5)身体障害で難病のある男性が目覚めた生き方:感謝第390回『仏教思想の精髄:煩悩が苦の原因・慈悲が幸福の条件』(2018年12月9日 大阪 62min) (2018年12月10日)
この講義は、苦の原因は煩悩という仏教の思想の精髄を詳細に解説したものである。
釈迦の中核の思想である四諦の教えは、人の苦しみの原因は、自己の能力の不足や、悪い他者や社会などでではなく、自分の内側の煩悩とする。そして、何を根拠にそう言い切れるかを理解することは、人間の苦の原因を深く分析し、苦を解消する重要なポイントである。
そのためには、
1.仏教用語としての「苦」(サンスクリット原語ではドゥッカ)の正確な意味、
2.人の苦しみを分類的に分析した「四苦八苦」の教え、
3.煩悩的な喜びがとらわれを増大せるために苦の原因を増やすとする「苦楽表裏」の教え、
4.煩悩的な喜びは、上に行くほど得ることが難しい構造があること、
5.煩悩的な喜びは、人生の先に行くほど得ることが難しい構造があること、
などを理解する必要がある。更に、苦の原因には、内的な原因として、煩悩があり、外的な原因として、煩悩が満たされていない状態があるが、外的な原因を改善すると(=より煩悩を満たすと)、とらわれ=煩悩も増えて苦が減らないため、内的な原因=煩悩こそが真の苦の原因と解釈される。
講義の後半には、煩悩を追求する人生と、煩悩の対極である慈悲の実践を行う人生を比較して、①心の安定や苦に対する強さ、②健康・寿命、③人間関係、④知性、⑤自己実現や競争に勝つ能力などにおいて、どのような違いがあるかを詳しく解説している。
第389回『自我意識と悟りの意識、循環の中の上昇期の思想』(2018年11月25日東京 62min) (2018年12月 3日)
1.自我意識と悟りの意識
(1)自我意識の特徴
自己中心の狭い心・目先の利益中心の短期的視点
自と他、苦と楽の区別が強い。
貪りと怒りで、不安定で不平等な心(2)悟りの意識(宇宙意識)の特徴
他者万物を包む広い心・無常を認識する長期的視点
自と他の繋がり、苦楽が表裏と理解する智恵(智慧)
万物に平静・平等な広い意識(3)宇宙意識の恩恵
①苦に強く安定した心:多くの他者の苦を理解する広い心
②広い心による精神的・生理的な幸福・心地良さ(内的歓喜も)
③健康・長寿:低ストレス・良い気の流れ・折れぬ前向きな心
④良い人間関係:奪い合わずに分かち合う行動
⑤人生の重要な目的を実現する(奪わずとも自ずと他者に勝る)
2.終末思想と循環上昇思想:宗教の未来観(1)1990年代:終末思想の流行
①終末思想:人類は最終戦争・最後の審判で週末に向かう
②オウム真理教、IS・アルカイダ、ブランチダビディアン、
キリスト教保守主義・イスラム原理主義(2)今後の未来観の可能性:循環の中の上昇期の思想
①インド思想(ヒンズー教・仏教)が説く循環論的な宇宙観
宇宙は生成と消滅、人類は上昇と下降を繰り返す。②当面の人類は上昇期とするインドの宗教者の思想
1.釈迦牟尼:寿命が伸び、多くの人が悟る弥勒仏の時代へ
2.ヨーガ行者:今後は上昇期で科学技術と精神性が向上。(3)ニューエージ思想・占星学が説く循環の中の上昇期
①水瓶座の新時代=ニューエージ・ムーブメント
占星学が説く天宮十二星座を巡る人類文明の循環の思想。
今後は魚座の時代から水瓶座の新時代へ移行して上昇期へ。②水瓶座・土星の時代:水=水平・平等の時代
土星の象意の長寿・科学・安定・平等=民主主義が特徴
→仏教の弥勒仏の予言と同じ水瓶が象徴の長寿の時代を予見。③魚座・木星の時代:母子の魚=近親者の対立の時代
木星の象意は、宗教、外国、拡大:世界宗教の登場と対立(4)現状の時代分析:上昇期を予感させる諸要素
①終末思想の衰退:最終戦争・第三次世界大戦の危機は減退
核戦争・大国間戦争の危機よりも、経済貿易戦争の危機へ②長寿社会の到来と高齢者の2極化
1.老化防止の医療革命の始まり
2.長寿だが不幸な高齢者:鬱・認知症・自殺・感情暴走
3.一部の高齢者に悟りの境地の広がり:老年的超越の新現象