2018年4月
第364回『30代から始まる心と脳の老化とそれを防ぐ方法』(2018年4月22日福岡 66min) (2018年4月23日)
1.脳を含めた老化は30代からで、最初に「心」が老化する。
脳の中で感情を制御する前頭葉がまず最初の老化=前頭葉が老化する
最近問題となっている切れる老人、きれる若者の現象の背景2.前頭葉が司る機能とは?
(1)感情の制御(理性)、
(2)創造性・新しいことへの対応
(3)出力系の作業:話す・書く(入力系:聞く・読む・憶える)
(4)物事を行う意欲3.前頭葉と共に見られる脳内の老化現象
(1)セロトニン分泌不足→(老人性)鬱になる→鬱から認知症にも
(2)脳血管の動脈硬化:脳血管は細く硬化は脳梗塞・認知症の原因に
(3)男性ホルモンの減少:意欲・判断力・記憶力・男性的優しさの衰え4.脳・身体以外の高齢者の問題
(1)環境要因:多くなる喪失体験(色々出来なくなる、家族知人を失う)
落ち込み・苛立ちが増え、切れやすくなり、孤立する。(2)心理的要因:否定的な固定観念:こうあるべきという極端な思い込み
そうではない自分が許せず、そうではない他人に怒る、切れる。5.二極化する老人:高齢期という「プレ来世」
(1)高齢期に、2割が鬱・認知症、2割が老年的超越=悟りの境地に
(2)長寿社会の高齢期とは、仏教が説く来世の前触れに似る
長寿社会では高齢期が長くなり、その健康寿命が重要となる。
高齢期までの実践が高齢を「地獄」にも「極楽」にもする。6.脳の老化の予防:脳も筋肉と同様に鍛えるべき
前頭葉を鍛える方法
①複雑な作業・計画性を要する作業
②新しいことへの取り組み・想定外への対応・創造性を要する作業
③適度な運動:有酸素運動:脳内の血流・酸素の増大
④良い姿勢:上記の血液循環に関係
⑤瞑想:まさに感情制御(煩悩制御)の作業の極み7.若さを保ち、悟りをもたらすヨーガ・仏教の修行の基本
(1)修行の最大の目的は感情・煩悩の制御
修行はまさに前頭葉を最も活性化する作業
(2)ヨーガの基本的な身体的な修行
①環境の浄化:外気の浄化:整理整頓・喚起・心が静まる五感の情報
②運動:ヨーガ体操(アーサナ)・仏教の歩行瞑想(経行)
③呼吸:ヨーガの呼吸法(プラーナーヤーマ)
④姿勢:特に背筋を伸ばすこと
第363回『ポスト平成の時代の社会と心の問題:長寿社会』(2018年4月15日 大阪 68min) (2018年4月18日)
1)ポスト平成の時代の特徴
1.経済:グローバル資本主義から一国主義の台頭による混乱
2.政治:米国主導の国際社会から多極化社会・Gゼロ状態の混乱
→未来の国際協調・政治のグローバル化=世界連邦への道程?3.技術:人工知能・宇宙開発
1.IT・人工知能の広がり・人間の労働・活動の質の変化
2.宇宙開発(の民営化)の発展と宇宙体験の大衆化の始まり4.社会:少子高齢化社会から国際化社会・長寿社会の広がり
5.環境:気候・エネルギー問題の激化
高齢化社会=長寿化社会=高齢期が長い人生と高齢者中心の社会
→二極化する老後の状態・人生全体を見渡して幸福を考える必要性。人工知能の発展=肉体労働に加え知的労働も機械が行う時代
→競争に勝つ知能ではなく、心の幸福を得る智慧の重要性の増大
2)長寿化社会の心の問題:心理学・脳科学・社会学・仏教思想の視点1.高齢者の攻撃的な言動:キレる老人
最近老人の攻撃的な行動が目立つ
駅員への横暴、病院での横暴、店舗でのクレームなど
最近15年間の統計で高齢者の犯罪(発生率)の増加など2.高齢者のキレる現象の原因・背景
(1)脳の前頭葉の萎縮による機能低下
1.前頭葉は理性・衝動の抑制・意欲・思考を司る
2.前頭葉の機能の低下がもたらす問題
①感情抑制機能の低下→怒りなどを抑えられない
②判断力の低下→おれおれ詐欺の被害
③意欲の低下→鬱・引きこもり→体力の低下
④性格の先鋭化→元からの欠点がより目立つ(疑い深さなど)
(2)喪失体験の増大(今まであったものを失うことによる失意)
1.定年退職、肉体・知性の衰え、配偶者・友人の死など
2.高齢者は喪失体験からの立ち直りも遅い(前頭葉の機能低下なども原因)
3.自分の能力の低下への腹立たしさが、他者への怒りを暴発させる背景要因に(3)心理的側面:固定的な物の見方・忍耐力の低下・精神的な飢餓感
1.こうあるべきだという思い込みが強く、自分に腹がたち、他者にキレる
2.忍耐力が低下して、待ちきれず切れて、孤独になる
3.周囲から大事にされていないという飢餓感からキレる場合もある3.予防策
(1)前頭葉を鍛える
①退職後も、複雑な計画性を要する作業を積極的に行う
②計画的な生活を送る(やることリストを作る)
③新しいことに挑戦する(新しい作業=前頭葉が担当)
④適度な運動→脳内の血流の改善。姿勢の改善も有効
⑤座禅等の瞑想を行う(煩悩の抑制は、理性の強化そのもの)(2)喪失体験に対応する心理学的なノウハウ(SOC理論)
①目標を調整する(若い時の目標に固執せずに、無理のない目標を設定する)
②今ある能力を目標達成に最も効率よく使う(体力の低下を技術・経験で補うなど)
③他者の補助も借りる(他人の支援・補助器具を活用、自分の能力に固執しない)
(3)極端で否定的な物の見方を和らげる認知療法高齢者にありがちな固定的で否定的な見方を解消する
(4)苦楽表裏の仏教思想の活用
加齢・老化の裏のある長所に気づく。老化の逆活用による幸福
第362回『ポスト平成=長寿社会の心理的な問題と悟りの可能性』(2018年4月1日東京 53min) (2018年4月 6日)
1.ポスト平成の時代の特徴の一つ:長寿社会
ポスト平成の時代はどんな時代か。平成はソ連・共産主義の崩壊で、グローバル資本主義の時代であり、抑圧されていた宗教、しかも原理主義が復活して強まった(イスラム過激派・キリスト教保守主義・オウムなど)。しかし、今現在米国中心に保護主義が到来し、オウム死刑囚の執行で一つの区切りに。
その後のポスト平成の政治・経済・社会と、思想・宗教・精神世界はどうなるかを考えるとき、重要な要素が、確実にやってくる高齢化社会=長寿社会である。
2.暴走老人か、悟りの境地か:今高齢者の二極化という重要な事実が!最近、キレる老人、暴走する老人、そして高齢者犯罪の増大など、高齢者の心理的な問題が目立ってきた。その一方で、一部の高齢者は、まさに仏教の悟りの境地に通じる「老年的超越」を達成するという研究報告も現れた。人生の終盤に、地獄を見るか、天国にたたずむか、「高齢者の二極化」という重大な事実を検討する。若い時、中年期の人生をどう送るかが、人生の終盤に決定的な違いをもたらす。
◆以下は、この講義のレジメです。1.老いの科学
釈迦は、生・老・病・死の4つの苦しみと、その超越を説いた(人間の避けられない苦)。
これまでの講義では、精神的な病気、死・死生学・死後の転生に関する科学的な研究を扱った。
今回は老い。高齢化社会に必要な心の問題の理解、心理学・脳科学・社会学の知見を学ぶ。2.高齢期の心理を学ぶ意味・メリット
(1)今後は高齢者中心の社会になる
(2)自分達も必ず高齢者になる
(3)高齢期の問題と可能性は、若者にも生じ得る3.老人の暴走:キレる老人の問題
理不尽な行動。駅員への横暴、病院での横暴、店舗でのクレーム、高齢者の犯罪の増加など。
4.老人の暴走の原因
(1)脳の前頭葉の萎縮による機能低下。
(2)喪失体験:今まであったものを失うことによる落ち込み・失意。
定年退職、肉体の衰え、配偶者の死、友人知人の死などである。(3)心理的な側面:固定的な物の見方、忍耐力、精神的な飢餓感など。
5.暴走老人にならないための予防策
(1)前頭葉を鍛える
①家事を行う。
②やることリストを作って実行。
③運動、血流の改善、姿勢の改善。
④座禅やマインドフルネス瞑想を行う。
⑤新しいことを始める。(2)喪失体験に対応する智恵
①目標の調整。
②今ある能力を最も効率よく使う。
③他の補助も借りる。
(3)極端で否定的な物の見方を和らげる認知療法詳しくは、2014年GWセミナー心理学講義「認知療法、マインドフルネス認知療法」参照。
(4)苦楽表裏の仏教思想
6.老人性うつの問題
(1)うつ患者の4割が60歳以上
(2)老人性うつの症状
(3)予防
①高齢化によるセロトニンの不足:日光に当たる機会を増やす
②運動:特に一定リズムでの運動。ウォーキングなど
③認知の歪み(偏ったものの捉え方)を変える=認知療法
④その他、前頭葉を活性化させる方法と共通点が多い7.認知症
(1)全国で250万人
(2)症状
(3)予防
①有酸素運動
②生活習慣の改善
③脳を働かせる作業8.老年的超越
80歳を越えると、特に85歳を越えると「老年的超越」といわれる状態に達する高齢者がいる。
スウェーデンの社会学者のトルンスタムが提唱。高齢者の2割ほどということだ。①自己概念の変容:自己への執着が低下し、利他主義的、万物を肯定する考え方に変化。
②社会と個人の関係の変容:表面的な人間関係・社会的地位にこだわらず、一人の時間を大切にする。
③宇宙意識の獲得。