2017年10月
第347回『万物は一体:最新科学が裏付ける仏教・道教の一元的世界観』(2017年10月29日 東京 71min) (2017年10月30日)
1)量子力学・宇宙物理学は、私たちの日常・常識の世界観と異なって、万物を一体と説く大乗仏教や道教の一元論的な世界観を裏付けている。
1.万物が一体・同根と説く大乗仏教・ヒンドゥー・道教などの東洋思想
1.大乗仏教の縁起の法:万物は相互依存で、密接不可分に交流・関係
2.大乗仏教の根源仏の思想:万物は大日如来の現れたもの
3.大乗仏教の唯識思想:万物は根本の意識=阿頼耶識の転変したもの
4.道教の気の哲学:万物は太極を源とした気(元気)から生成された。
5.ヒンドゥーのヴェーダンタ哲学:万物はブラフマンの展開したもの2.万物一体の一元的な世界観を裏付ける量子力学・量子もつれの理論
1.量子とは電子・光子などの微細な粒子で、量子の粒子と波動の二重性をもつ
2.量子もつれ・量子テレポテーション:遠く離れた二つの量子が別物ではなく
一体となって存在する量子もつれ現象。量子はどこかに局在せず、
宇宙に広く繋がって存在する(非局在性)3.万物は同根と説く一元的な世界観を裏付ける宇宙物理学・ビッグバン理論
1.宇宙は微小な熱光球の爆発的な膨張=ビッグバンを経て創世された
2.突き詰めると、宇宙は特異点と呼ばれる一点から生まれた可能性
2)脳科学・心理学は、人の脳神経細胞は、現代社会に適応不全の状態にあり、心身・人間関係・社会上の問題を起こしており、過剰なとらわれをコントロールする仏教・ヨーガの実践や心理療法の重要性を示している。
1.本来は生命維持のためにあった脳の感情制御システムが、
現代社会には適応できずに、暴走・麻痺・機能不全を起こしている2.本来は生命の脅威への反応(闘争や逃避の行動)を促す神経伝達物質
であるアドレナリンが、生命の脅威ではなくて、批判・否定される時にも
過剰に分泌され、不安・嫌悪・怒り・ストレスが強くなる傾向がある。
→不安神経症・パニック障害など。3.何かを達成する時に喜びを感じる神経伝達物質であるドーパミンが、
なかなか出ず、欲求不満、生きる意欲の喪失(鬱・自殺)の問題に。承認欲求などを際限なく求める傾向があるが、実際には満たされず欲求不満に
欲求が満たされないとドーパミン神経は不快をもたらす。
4.鎮静・鎮痛効果があり、ドーパミンの分泌も促進するエンドルフィンが
なかなか出ない状態にあり、心の平安・充足が得られない。
5.心理学が説く対処法・心理療法は、仏教の修行と酷似している。
例えば、認知行動療法の流れであるコンパッション・フォーカスト・セラピー(CFT)
仏教のマインドフルネス瞑想、ヨーガとよく似た呼吸法、イメージングの瞑想
慈悲の瞑想など。第346回『脳科学が説く人間の感情制御システムの暴走とその制御法』(171022 福岡 63min) (2017年10月22日)
脳科学に基づく心理学の見解では、現代人の場合は、人間の脳の基本設計である三つの感情制御システム(脅威への対処、欲求と獲得、充足と沈静)が、過剰反応=暴走したり、麻痺したり、不足しており、、そのために過剰なとらわれが生じ、様々な苦しみ・ストレス・不安・自信喪失・鬱病などを招いている。この講義では、そのシステムの概要と問題とその重要性、そして、それをコントロールするためのポイントを解説する(なお、詳細なコントロール方法に関する講義の動画は非公開)。
1)脳科学:人間の3つ感情制御システム:脳の基本設計
1.脅威対処のシステム:危険・脅威を感じて反応する仕組み
 生命の脅威に対処する仕組み。アドレナリン(脳内伝達物質)と関係する。人は、脅威に対して不安、怒り、嫌悪が生じ、身構えたり、逃げたり、闘ったり、回避などをする。本来は、生命維持のためのシステムであり、用心深く、一つの危機も要素も見逃さず、絶えず警戒を怠らない性質がある。
 しかし、生命欲求が充足され、承認欲求が中心の現代社会では、他者に否定されることなどにまで過剰に反応し、批判を過剰に恐れ、一人の批判にも反応し、絶えず気に病むとといった問題が生じ、ストレス・不安・自信喪失・鬱病等の原因にもな問題がある。2.欲求獲得のシステム(動因と資源獲得のシステム)
 目標達成の時に快感を与え、快・意欲・学習に関係するドーパミン(ホルモン・神経伝達物質)と関係する。この問題は、達成できない時は不快感を感じること。更に、本来は生きるための衣食住を獲得するシステムだが、現代社会では、名誉・地位・勝利などの承認欲求も刺激されるため、このシステムを過剰に働かせている。
 ドーパミン神経は、絶えず満たされている欲求には感受性が鈍くなり、ドーパミンを余り分泌せず、多く分泌させるには、より多くの難しい欲求が満たされる必要があるが、実際には満たせないために、欲求不満・ストレスが生じ、鬱病のように意欲・やる気の喪失に繋がる。3.充足沈静のシステ(充足とスージング(沈静)のシステム)
 上記2つの危機と欲求のシステムの過剰反応・稼働を制御・沈静し、バランスを保って、平穏な幸福観や充足感などの肯定的な感情をもたらす。満足した際の喜びをもたらすエンドルフィンと関係するとされる(セロトニンも関係か)。
 心理学・心理療法では、過剰な不安・緊張・欲求不満・ストレス・自信・やる気の喪失といった問題を解消するには、このシステムを強化する必要があるとされる。仏教・ヨーガの修行も、これと同じ趣旨である。
2)過剰な反応・とらわれを解消する重要性と方法1.過剰な反応・とらわれは不幸を招く
 過剰なとらわれは、1.心を不安定にし、2.物が正しく見ることを妨げ、3.ストレス等で心身の健康を損ない、4.失敗・敗北・批判を極度に恐れて引きこもったり、逆に他人に責任転嫁して攻撃をしたり、不正な不健全な手段で欲求を充足しようとして、自滅さえ招いて不幸を招く。
 一方、過剰なとらわれを解消すること=心のコントロールは、1.心の安定、2.正しい認識力、3.ストレスの解消=心身の健康、4.良い人間関係といった幸福になる資源・条件を整える。2.心をコントロールする叡智:4つの柱
 心自体は直接コントロールできないが、心と深く関係・連動する要素をコントロールすることで、心をコントロールできる。仏教・ヨーガ・諸宗教・心理学全体を見渡して、心と深く連動し、心のコントロールのポイントとなるのは、以下の四つ
 1.思考:心が安定する考え方・物の見方・思想哲学を学ぶ
 思考と心・感情は深く連動している。仏教の修行では教学である。
 2.行動:日常で心が安定する行動を選択するように努める
 行動と心も深く連動。心が行動に、行動が心に影響を与える。
 仏教・ヨーガの修行では善行・功徳・戒律の実践3.身体:一般的な健康に加え、体の気の状態を整える。
 気を強化・浄化する身体操作・身体行法を行う。
 ヨーガの場合は、アーサナ(体操)・プラーナーヤーマ(呼吸法)など。 4.環境:体の外側・環境の気(外気)を整える
第345回『心のコントロールの重要性とヨーガと仏教の行法・瞑想法』(2017年10月15日大阪 46min) (2017年10月17日)
1.心のコントロールの重要性
心をコントロールし、過剰な欲望・とらわれを減少させ、心の安定と集中力を高めることは、悟りと、世俗における重要な物事の達成(自己実現など)の要である。
2.心のコントロールと悟り
なお、ヨーガ・仏教の禅定は、瞑想による心の安定と集中という意味であり、それが、物事を正しく観る智慧と、智慧と一体の慈悲、悟りをもたらす。禅定⇔智慧・慈悲。
3.心のトントロールと物事の達成・自己実現の関係
過剰なとらわれは障害となり、それをコントロールすることが重要である。
1.欲求・とらわれが強すぎて、望んでいる結果ばかりが気になると、
不安その他で心が不安定になり、結果を得る手段に集中できない。
更に、
1.失敗への過剰な恐れる余り、努力をやめ逃げたり(引きこもり)、
2.過剰な自己愛を背景に、失敗・不満を他人に責任転嫁したり(被害妄想)、
3.不正手段を使っても結果を得ようする(奪い合い)
などして、人間関係を含めて、達成の道を逆に損なう。
2.心が不安定な時は、物事が正しく見れず、目的を達成の道が分からない。
1.苦しい時は、苦しみを過大視し、悲観的になる。
2.喜びに興奮している時は、喜びを過大視し、油断しやすい。
よって、心の安定=平静は重要。3.心が不安定だと、ストレスなどが強まり、長期的には心身の健康を損ない、
それが、継続的な努力を妨げる。心と体は深く関係。
よって、安定した心で、物事を正しく判断し、健康と良い人間関係を保つことが、
物事の達成の道。心と頭と体と人間関係の良い状態は、心理学の理論においても、
人が幸福になる資源(リソース)とされる。4.心のコントロールのための古今東西の叡智
仏教・ヨーガ・諸宗教・心理学を検討し、心の制御の智慧をまとめると、
心と深く関係する、思考、行動、身体、環境の四つを浄化することが重要である。1.思考:考え方・物の見方・価値観・世界観
心が安定する考え方を学ぶ=「教学」
物の考え方・見方(認知)は感情と一体不可分2.行動:日々の行動:
心が安定する行動を実践する。そのような行動が善行・功徳・戒律の実践である。
行動の仕方で、心・感情は変化する。3.身体:体の状態、特に気の流れ
気の流れを整える作業=ヨーガ・気功などの「(身体)行法」
気の流れと、気持ち=心は深く関係する。更に気は、体=病気にも関係4.環境:心が安定する「環境」を整える=「聖なる環境・聖地」
内気と外気は深く関係。良い外気・五感の刺激がある環境に身を置く。5.ヨーガの心のコントロールの行法
ヨーガの伝統的な修行は、戒律を土台とし、
アーサナ(体操)・プラーナーヤーマ(呼吸法)を経て瞑想に入る。
アーサナ・プラーナーヤーマは瞑想の準備であり、瞑想でもある。
1.アーサナ:正確な訳は、座法・体位法。ヨーガのポーズとも。単なる体操・体のほぐしだけでなく、姿勢・呼吸法も含む実践。
姿勢と心は深い関係がある。2.プラーナーヤーマ:正確な訳は調気法(調息法とも)
プラーナーヤーマは、呼吸の操作で、
1.息の仕方と関係する心をコントロールする意味(調息法)に加え、
2.体内の気をコントロールする(気の強化と気の道を浄化=調気法)
という意味合いがある。
エネルギー・集中力の改善と、心の安定(煩悩が減少)をもたらす。3.気を浄化・強化し、心を静め、集中力を高める5つの呼吸法
1.基本呼吸法
2.左右の気道を浄化する呼吸法
3.両気道の浄化と集中力を高める呼吸法
4.気道を強力に浄化する呼吸法
5.心を静める波動の呼吸法6.仏教の4種の瞑想法の解説・実習
心を静めて広くし、智慧と慈悲の心に導く瞑想法
1.初期仏教の智慧の瞑想:四法印・四念処
2.慈悲の瞑想:四無量心・平等心
3.大乗仏教の象徴物(シンボル)の瞑想
4.ひかりの輪のオリジナル瞑想:輪の読経瞑想第344回『ヨーガの呼吸法:プラーナーヤーマ(調気法)の奥儀』(2017年10月1日東京 60min) (2017年10月 2日)
1)ヨーガの呼吸法の効果・意味
1.ヨーガの真の意味は、体操ではなく、心のコントロール。心をコントロールする
瞑想の準備段階がヨーガの呼吸法であり、それ自体が瞑想とも言える。2.ヨーガの呼吸法=プラーナーヤーマの目的は、気のコントロールで、調気法とも。
気(プラーナ)は、中国とインドの哲学共通の概念で、目に見えない生命エネルギー。
体には、気が流れる道=気道と、複数の気道の交差点があり、気は、息、血流、筋肉、神経、熱・音・波動(光)に連動して変化するが、プラーナーヤーマは、呼吸の調節で、気を強化し、気道を浄化する方法。3.プラーナーヤーマによる気の強化・気道の浄化は、体の諸機能の正常化、健康、
心の安定、集中力の増大、欲望・煩悩の減少、瞑想(による悟り)に役立つ。
呼吸法と瞑想などによる心の安定は、物事を正しく見る智慧、それによる悟り
をもたらす。智慧があれば、悟りに限らず、世俗の物事の達成も可能となる。
2)3種の呼吸法の解説・実習:基本から高度な行法まで1.呼吸法の基本(基本的な呼吸法)
1.背筋を伸ばし肩・腕の力は抜き、口ではなく鼻から腹式呼吸で息を出し入れす る。
2.息を吸った後に、多少息を止める、入息・保息・出息をリズミカルに繰り返す。
目・顔は前に向け、下や横を向けない。2.左右の気道を浄化する呼吸法
1.体の右側を通る右気道(交感神経に対応)と、左側を通る左気道(副交感神経) があり、それぞれ、右鼻腔だけないし左気道だけでの呼吸法で浄化できる。音が するくらい強く出し入れするのがコツ。なお、経典上は、やり方は二通りある。
2.右気道が詰まっていると、怒り・嫌悪・イライラ・緊張が生じやすい。
3.左気道が詰まっている、無智・愚鈍・頭が働かない・ぼっとした状態・眠気・無関 心、冷淡さが生じる。
4.左右の両気道を浄化すると、心の安定と集中、落ち着いた鮮明な意識を得ら れ、日中の学業・仕事、夜の深い睡眠、悟りの瞑想に役立つ。
3.両気道の浄化と集中力を高める呼吸法1.左右の鼻腔を交替々々に使って出息・保息・入息を繰り返す。
2.左右の両気道の浄化、体内の気の強化に加え、特に保息が時間を長くしていくと、集中力の増大を助ける効果を持つ、高度な呼吸法の一つ。