2016年11月
第307回『仏教思想の中核「四無量心」を総合的に解説』(2016年11月27日 東京 55min) (2016年11月28日)
四無量心とは、四つのはかりしれない(利他の)心という意味で、仏陀の心であり、仏教修行の最大の目標の一つ。わかりやすく言えば、平静で落ち着いた、広く大きな愛の心。
具体的には、その四つは、
1.慈:マイトリー:
他の幸福の望み、他に楽を与える心と実践
貪り・独占を超えた心2.悲:カルナ:
他の苦しみを悲しみ、他の苦を取り除く心と実践
冷淡を超えた心3.喜:ムディタ:他の幸福・善行を喜ぶ心と実践
妬みを超えた心4.捨:ウペクシャ:平静な心・平等心・無頓着
好き嫌い・わけ隔て・差別を超えた心
自分を傷つける他の悪行への怒りを超えた心
四無量心は利他心であるが、同時にその実践者本人に真の最高の幸福をもたらす。
具体的には、1.落ち着いた大きな心による精神的な幸福、2.健康長寿、3.良い人間関係・協力者、4.正しい判断・智恵・インスピレーション、さらには、5.気の強化・浄化による軽快で霊的な歓喜を伴う身体(仏陀の身体)をもたらす。四無量心は、物事をありのままに見る智慧(智恵)に基づいている。それは、自他、自他の幸福を含め、万物は相互依存で、一体であり、固定した実体はないことを悟る智恵である(縁起と空の教え)。
第306回『心を変える4つの方法と静まった心の利益、トランプ後の世界の展望』(2016年11月20日 福岡 76min) (2016年11月20日)
1.心のコントロールの方法
怒り・不安といった心のコントロールには、心自体を直接コントロールできないので、心と連動する、1.思考、2.行動、3.体の状態(気の流れ)、4.環境を変える方法がある。初期の仏教・古典ヨーガは思考と行動を変えることが中心で、後期の仏教・ヨーガは、気の流れのコントロールに重点を置いた。
2.仏教の人生観・幸福観
仏教は、「今よりもっと他人よりもっと」と求めるのではなく、足るをして分かち合い、落ち着いた大きな心を求めることをその人生観・幸福観としている。それは、精神的な幸福、健康長寿、よい人間関係、正しい判断をもたらす。また、落ち着いた心は、感情に妨げられず、合理的な判断やひらめきを得るなど、正しくものを見る力を与える。さらに、その状態に入ると、同調する人たちの協力や大きな力による導きを感じる人もいる。
3.涅槃と現世
私たちが日常体験する「現実」は唯一のものではなく、人や生き物によって五感と思考が違うため、人や生き物の数だけ現実はある。現実とは五感と思考が作り出すものだ。よって、悟りの心(=涅槃)に至ると、普通の心とは、異なる現実を体験する。その心には、万物が恩恵、仏、一体と写しさ出される4.トランプ後の世界
歴史を繰り返すというが、トランプ氏の経済政策は、大減税・財政拡大・規制緩和など、レーガン政権(レーガノミックス)と似る。景気がよくなったが、財政と貿易の赤字が増え、日本は急激な円高を求められ、その対処でバブルとその崩壊をきたした。今後、米国の赤字が深刻化し、円高・保護主義・移民排斥など米国第一主義の政策をとれば、日本・世界への打撃があるが、30年前とほど日本や世界に余力がないので、大きな時代の転換点になる可能性がる。第305回『日常の世界と悟りの境地の違いと、双方に生きる道』(2016年11月13日 大阪 74min) (2016年11月14日)
1.日常の世界(現世)
普通の人は、日常体験する世界を唯一の現実と錯覚しているが、それは、自分の五感と思考が意識に現したものに過ぎず、人・生き物の数だけ無数の現実があり、絶えず変化する無常なもので、自と他の区別・対立があり、そのため苦しみがある。2.悟りの境地(涅槃)の違い
悟りの境地・涅槃には、五感・思考・感情は存在しない(五感・思考を介さず、世界を直接体験したもの)。変化がなく、自他の区別・対立がなく、苦しみがない。神聖・静寂・平安な状態。五感・思考の働き静める瞑想によって体験する。3.現世と涅槃を行き来する
仏教的に理想の生き方は、現世にも涅槃にも執着しないこと。現世の苦しみは執着が原因だが、涅槃を体験して執着を滅し、現世を足るを知って苦しみなく、他者を悟りの境地に導き、分かち合い=慈悲の精神で生きる道(菩薩道)がある。また、この静まった精神は、物事を正確に見るので、現実の問題を解決し、物事を達成することもできる(止観)。4.現世の苦しみが喜び・導きに変わる
涅槃の体験をすれば、現世の苦しみは無意味ではなく、自分を涅槃に導く愛の鞭だと理解する。喜びに限らず苦しみを含めた全てが悟りに導く経験であり、世界に大いなる導きの意思を感じる人も(輪廻即浄土・現世即浄土)。