2016年3月
第276回『仏教心理学(唯識思想):幸福・不幸を決めるのは心の持ち方』(2016年3月27日 東京 50min) (2016年3月28日)
1.無智と智慧、真の幸福とその道
仏教の心理学では、自他の幸福を区別する心の働きが、人の苦しみの根本であり、それを無智と呼ぶ。一方、自他の幸福は一体で、他との苦楽の分かち合いが真の幸福の道と気づいた意識を智慧とも言う。
智慧は、最高の宝は、自分だけが所有するものではなく、皆が共有するもの=大自然・宇宙万物と気づき、他の幸福を妬まずに喜ぶ広い心と、心身の健康・良好な人間関係・正しい判断力をもたらす。2.すべては心の現れ(唯識思想)
私たちが見る外界は、実際には、他者・外界そのものではなく、科学的には、私達の脳内の情報である。感覚器官が脳に伝達する信号と、それと連動して意識の上る様々な情報である。
よって、同じものに接しても、人により異なる体験をする。「一人に一つの宇宙」がある。脳内の情報という点では、現実の体験と夢の体験も同じ。これは、幸福・不幸が心の持ち方で左右され、「外界」は自分の心を映し出す一面があると理解し、心の訓練が真の幸福の道と気付く手がかりとなる。
第275回『苦楽の分かち合い、キリスト教と仏教の違い、死を乗り超える感謝の教えなど』(2016年3月13日 福岡 75min) (2016年3月13日)
1.仏教の基本的な幸福哲学である苦楽表裏と慈悲(苦楽の分かち合い)に基づく生き方の復習的な解説
2.質問に答えて、キリスト教と仏教の本質的な違い・役割を解説
多くの人が悩む死の苦しみ・死後の不安に関して、その悩みを委ねる先として最も強力な宗教であるキリスト教と、その悩みは錯覚により生じることを悟ることを説く仏教について、両者を対比しながら解説3.質問に答えて、死に対して、いかに感謝と恩返しの思想が、死にゆくものと看取る者双方の苦しみを和らげるかを解説
その他、クンダリニーヨーガに関してなど、興味深い質問に回答しています。
第274回『 全ては心の現れと説く仏教哲学‐敵と友も心が作り出す』(2016年3月6日 名古屋 56min) (2016年3月 6日)
1.すべては心の現れ
重要な仏教哲学の一つとして、外界は全て自分の心の現れであるというものがある。それぞれの人は、異なる五感と意識を持っており、そのため、人によって、同じ現象を異なる印象を持って受け止める。言い換えれば、一つの確たる世界があると言うのではなく、実質上10人に10人の世界がある。これは、大乗仏教の唯識思想と呼ばれる思想の一部でもある。
これは、仏教の縁起と空の思想にも合致する。それは、あらゆる事物は、原因・条件によって生じ(=縁起の法)、原因・条件が変われば変化するため、固定した実体がない(=空である)と説く。よって、外界を受け止める五感や意識が異なれば、感じる世界も変わる、ということである。
そのため、前回の哲学講座では、心の持ち方・考え方によって、苦しみも喜びに変えることができると説いた(同じように、喜びも苦しみに変わることがある)。
2.心が作る敵と友
さて、今回は、人にとって、最大の苦しみの対象の一つである「敵」という存在も、自分の心が作り出す面があることを解説する。すなわち、敵も、自分の心の持ち方が条件となって生じるものであって、心の持ち方によって、友が敵に見えるし、逆に敵を友と見ることも可能なのである。以下に、その事例を挙げる。