【出羽三山5】静けし浄土・月山への登拝
翌日、早朝3時30分に起床して勤行を行った後は、薄暗い中、月山へと向かいました。
月山は、出羽三山の主峰として、秀麗な姿でそびえ立つ、標高1984メートルの修験道の御山です。
月山は、古来、朝廷をはじめ幅広く庶民に篤い崇敬を集めてきた霊峰です。
月山にお祀りされている月を象徴する神「月読命」は、天照大神の弟神で、夜、海、魂や死後(命の再生や蘇り)の世界を司り、天下泰平、国土安穏、産業発展、五穀豊穣、大漁満足に霊験あらたかとされています。
死後の世界を司るところから、祖霊の鎮まる山としても崇敬を集めています。
八合目までは車で行くことができ、八合目に到着すると、眼下には美しい山々の風景が広がっていて、皆釘付けになっていました。
先達の山伏の方の吹かれる法螺貝が、登拝の合図です。
いよいよ片道3時間の月山登拝のはじまりです。
登山口付近は、弥陀ヶ原と呼ばれる場所で、なだらかで歩きやすい道が続いていました。
15分ほど歩くと、「月山本宮」とある鳥居をくぐります。
月山卯年御縁年(がっさんうどしごえんねん)である今年は、出羽三山の主峰・月山の十二年に一度の幸運な年にあたり、今年、月山を参詣すれば、十二回お参りしたのと同じ功徳になるといわれている特別な年にあたります。
(月山御縁年http://www.dewasanzan.jp/usagoen.html)
月の使者とされる兎は、古くから悪運から免れる力があるとされていて、兎の像がありました。
鳥居の左手には、死者・ご先祖様を弔う仏教式の塔が立ち並んでいて、神と仏がいらっしゃり、祖霊の鎮まる御山なのだということが伝わってきます。
ここは、月山中之宮御田原神社となっています。
まずは神仏習合形式での勤行で、月山の神仏にご挨拶をさせていただき、この祖霊の鎮まるといわれる御山で、東日本大震災の犠牲者への祈りをさせていただきました。
このあたりは阿弥陀如来の「弥陀ヶ原」と呼ばれ、浄土を思わせるような、高原の美しい湿原の風景が広がっています。
ところどころに、かわいらしい高山植物が咲き乱れているのも浄土を思わせる風景でした。
途中、休憩も入れながら、一歩一歩、杖で、自分の足場を見つけながら登っていきました。
この日は、めったにない穏やかなお天気だということで、晴れの空に雲がかかり、暑さを和らげてくれているようで、初心者のわたしたちには、たいへんありがたかったです。
途中、強風が吹くこともあり、流れる雲の風景も、龍のようで、清らかで美しいものでした。
月山に登るには、白装束が一番似合うとお聞きしていましたが、本当にそう思いました。
どこか異世界のようで、どこまでも静かで、美しい、浄土のような山です。
九合目に着くと、傍らにお地蔵様がお祀りされていました。
そして仏生池という池が真名井神社としてお祀りされていました。
仏の生まれる池と書くように、本当に仏様が生まれてきそうな、不思議な雰囲気の池でした。
ここで勤行を行い、少し休憩させていただきました。
皆、山伏の形式の、宝冠と呼ばれるさらしを頭につけています。
本当に綺麗な空の日でした。
山頂までもう一歩、気合いを入れて、登り始めました。
「【出羽三山6】月山山頂へ。そして再び湯殿山の虹」に続く。
2011年7月31日 実施