オウムの清算
オウム真理教時代の清算についてのコーナーです

ひかりの輪に対する評価

宗教学者による評価
(2022年8月 5日)

  以下の通り、オウム真理教(現アレフ)とひかりの輪を専門とする優れた宗教学者の方が、長年の広範な調査研究の結果として、ひかりの輪が危険な団体ではないことを認め、ひかりの輪の観察処分を取り消した東京地裁の判決を支持し、公安調査庁の見解を否定する報告を正式に発表されていますので、ご紹介します。

(1) 鎌田東二氏
  (上智大学グリーフケア研究所特任教授・京都大学名誉教授/宗教哲学・民俗学)

  多数の研究論文・著作・メディア出演で著名な宗教哲学者。
  長年オウム真理教研究を行い、宗教学上の魔境の概念でオウム真理教・麻原彰晃の闇をひも解いた「呪殺・魔境論」など刊行。

  ひかりの輪に関しても、その発足以来10年に渡り調査・研究。現在、優れた宗教学者多数が参加する「身心変容技法研究会」の代表研究者であり、所属する上智大学グリーフケア研究所の所長は、オウム真理教の研究でも知られ、日本の宗教学者のトップとも言われる島園進氏。
  身心変容技法研究会に関しては、こちらをご覧ください。

  鎌田教授は、以下の論文で、長年の広範な調査研究の結果として、ひかりの輪の思想の健全性を認め、ひかりの輪の観察処分を取り消した地裁判決を支持し、公安調査庁の見解を否定する論文を発表されています。

  以下は身心変容技法研究会HPにて公開中のページのリンクです。
(研究年報「身心変容技法第7号」(科研研究年報誌『身心変容技法研究』第七号)全272頁)
表紙(0.5MB)
目次(0.5MB)本文(8.7MB)奥付(0.5MB)裏表紙(0.5MB)

  以下は、「身心変容技法と霊的暴力――オウム真理教とひかりの輪の身心変容技法」鎌田東二より一部抜粋です。

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「公安調査庁も公安審査委員会もそうした表現を言葉だけ、口先だけの欺瞞であると見て、観察処分の必要を主張している。

  オウム真理教とその後のアレフとそこから独立したひかりの輪のそれぞれの思想と行動と活動を仔細に吟味し、比較していく必要があるが、それについては今後も継続考察していくとして、小論を締め括るにあたって、最後に、上祐史浩とひかりの輪が辿った分派独立の過程を「麻原隠し」と見るか、「麻原離れ」と見るかについては、私は後者だと見ている。

 それがこの十年間のひかりの輪の思想表現や活動を見ての結論である

  ひかりの輪の教本に一貫して表現されているのは狂信的なカルト宗教に対する慎重な態度と距離と批判的な吟味である。

  そこにはオウム真理教事件が引き起こした諸問題を深刻かつ真剣に反省的に捉え、混迷する時代の中での一人ひとりの生き方や内省・自己省察と自然理解・自然体験をベースにした人生哲学を学ぶ場であろうとしている。

  それは一種の「人生道場」的な集いと研鑽であるが、それはオウム真理教事件後の反省に基づく抑制とバランスの取れた見方と主張であり活動である。

  それを「麻原隠し」と断定する根拠はない。

  この点で、私は東京地裁の判決を支持する。ひかりの輪を観察処分が必要な公共の安全に脅威を与える危険な団体と見なさない。

  むしろ、ひかりの輪は、教本のみならず、さまざまな活動において、思想的にオウム真理教の危険性と問題点を自己反省的・総括的に批判し、そこからの離脱と距離を繰り返し確認しようとしている。

  また行動的にもオウム真理教が陥った自己肥大・自己幻想・自我のインフレーションの陥穽に陥らないように注意深く自己観察や自己抑制することや社会的公共性や信頼性を確保することを強調している。

  その方向性と指針に従って自己抑制と自己吟味を重ねながら地道に行動し活動を続けている。そこに「公共の安全を脅かす危険性」を見出すことはできない。

  内においては聖地巡礼や修験道の実践を通して、「六根清浄、懺悔懺悔」を内観浄化し、外においては、「外部監査委員会」を設けて外部の有識者の吟味検証を定期的に受けている。(中略)
もちろんそれが逸脱することのないように見守ることが必要であるが、本身心変容技法研究会は、「外部監査委員会」とは異なるところで、オウム真理教事件後の諸問題についてさらなる探究と吟味と情報公開を伴う社会還元を行っていきたいと考えている。」

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(2) 大田俊寛博士・埼玉大学


  新進気鋭の宗教学者であり、近年出色のオウム真理教研究とされる「オウム真理教の精神史」の著者。ひかりの輪に関しても、その教材・資料のほとんどを精査するなど、その広範な調査・研究は他の追随を許さない。東京大学大学院人文社会系研究科基礎文化研究専攻宗教学宗教史学専門分野博士課程を修了。グノーシス主義の研究でも著名。

  大田博士は、2014年、ひかりの輪の外部監査委員会(当時の委員長は河野義行氏・元長野公安委員・松本サリン事件被害者遺族)の要請を受けて、それまでの深く広範な調査・研究に基づいて、団体の思想・活動に観察処分に値するような危険性があるか否かに関して、意見を同委員会に提出されました。

  結論として、ひかりの輪は、オウム真理教の教義・活動の中で事件の原因となった危険な要素に対して十分な対処しており、その意味で危険な団体ではないとして、公安調査庁の見解を否定しました。また、2017年にも再び、同じ趣旨の意見を発表されています。

大田博士のひかりの輪に関する意見書(2014年11月)

大田博士のひかりの輪に関する意見書追加版(2017年11月)

大田博士の雑誌「宗教問題」の座談会(2017年10月)での発言メモ(2018年3月20日発表)

 なお、大田博士は、研究者が「ひかりの輪」の危険性の有無について客観的な意見を述べるためには、

(1)オウム真理教の教義において、どのような点が危険であったのかについて明確にする
(2)「ひかりの輪」の構成員と直接面談し、彼らの考え方を正確に把握する
(3)個人の宗教観に基づく評価や言及は控える

という3条件を満たす必要があると述べており(※注)、同博士は上記3条件にのっとって意見を述べられています。
 また、「ひかりの輪」について誤った意見を出している研究者等については、上記3条件を満たしていないとも指摘されています(※注)。

(※注)大田博士が東京地方裁判所に提出した2015年1月5日付け意見書および2017年12月7日付け意見書において

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