ヨーガとは?
1.ヨーガとは
ヨーガとは、「つなぎとめる」「結びつける」という言葉からきています。では、何を「つなぎとめる」のでしょうか?
ヨーガの根本経典である『ヨーガ・スートラ』にはこのように書かれています。
「ヨーガとは、心の作用を止滅することである」
あるいは、訳し方によって
「ヨーガとは、心の作用を統御することである」
心をつなぎとめる、つまり、普通は思いのままにならない心というものを、コントロールすることがヨーガであるということができるでしょう。
現代では、一般的には、ヨーガとは、体操のようなもので、美容や健康にいいものと思っている方が多いと思います。しかし、本来は、ヨーガとは、心に振り回されることなく、自在にコントロールできるようにするためのものなのです。
その訓練の副産物として、美容や健康にも効果が出てくるということです。
ヨーガの起源は古く、一説には紀元前2500年ほど前のインダス文明に、その起源があるともいわれています。紀元前800年から500年くらいには、インドで「ヨーガ」という言葉が登場し、心の統御によって特殊な意識状態に入ることは知られていたようです。
2~4世紀ころ、ヨーガをはじめて体系化した『ヨーガ・スートラ』がまとめられ、ヨーガの根本経典となりました。ここで著されているヨーガは「ラージャ・ヨーガ」(王のヨーガの意:古典ヨーガともいわれる)といわれるもので、心をコントロールする心理操作を中心とするヨーガです。
12、13世紀ころ、「ハタ・ヨーガ」といわれる動的ヨーガが現れました。生理的、肉体的修練を中心にしたヨーガで、現代で広く行われているヨーガは、このヨーガです。
「アーサナ」と呼ばれる体操から入り、「プラーナーヤーマ」という気を調える呼吸法を中心として行い、さらに「ムドラー」という身体のエネルギーを活性化させる高度な行を深めていくことで、「クンダリニー・ヨーガ」というヨーガにつなげていきます。
「クンダリニー」とは、ヨーガの説く、人の中に眠る霊的なエネルギーのことで、ヨーガの修行によって、そのエネルギーを覚醒させ、心の統御(解脱)のために生かすのが、クンダリニー・ヨーガです。
ハタ・ヨーガの主な経典である『ハタ・ヨーガ・プラディーピカー』の中に「ハタ・ヨーガはラージャ・ヨーガにいたろうとするものにとって、階段に相当する」と書かれていて、ハタ・ヨーガの目指すものも、「心の統御」であることがわかります。
ハタ・ヨーガは、この心の統御を、ヨーガが説くプラーナ(気)やクンダリニーなどの霊的なエネルギーの操作によって、達成させていこうとするものです。
2..ヨーガの流派
ヨーガには、以下のようなさまざまな派があります。
ラージャ・ヨーガ -- 心理操作を中心とする瞑想ヨーガ
ハタ・ヨーガ -- 身体生理的操作から心理操作に入るヨーガ
バクティ・ヨーガ -- 神を信じ愛する信仰のヨーガ
ジュニャーナ・ヨーガ -- 哲学的・思索のヨーガ
カルマ・ヨーガ -- 無私の行為(利他の奉仕)のヨーガ
マントラ・ヨーガ -- 聖なる音(真言)を唱えるヨーガ
この中で、ラージャ・ヨーガとハタ・ヨーガが、ヨーガの技法における中心的なものです。また、先ほど述べたクンダリニー・ヨーガは、ハタ・ヨーガにつながるものと考えてください。
3.ハタ・ヨーガの技法
現在一般にヨーガとして行われているのはハタ・ヨーガです。
ハタ・ヨーガにおいては、ヨーガ・スートラを代表する古典ヨーガ(ラージャ・ヨーガ)のように、心理操作だけでなく身体生理的操作を行うことで、プラーナ(気・生命エネルギー)を操作し、心の集中した状態・統御に向かうようにします。すなわち、ラージャ・ヨーガでは身体生理的操作が不足していたところを、ハタ・ヨーガは補い、発展していったのです。
言い換えれば、いきなり目に見えない心にアプローチすることは難しいものですが、ハタ・ヨーガによって、身体や呼吸をコントロールして、気(エネルギー)を調え、それによって、心にアプローチしていくということです。
そして、この気の操作によって悟りを目指すハタ・ヨーガの方法は、クンダリニー・ヨーガとも呼ばれます。この修行法は、仏教における密教にも取り入れられました。身体のエネルギーを強め、エネルギーの通り道を浄化することによって、エネルギーの動きと連動している心を改革していくスピードが飛躍的に速まります。
しかし、このハタ・ヨーガ(クンダリニー・ヨーガ)や密教は、心を改革していくスピードが速い分、重大な落とし穴があります。その落とし穴にはまらないためには、基礎的な注意点をしっかり押さえた上で行うことが必須条件となります。この注意点の詳細は、最後に記します。
さて、ハタ・ヨーガの重要な経典である『ハタ・ヨーガ・プラディーピカー』では、身体生理的操作を、以下のように体系的に解説しています。
ハタ・ヨーガの体系
1 アーサナ(体位法:ヨーガの体操)
2 プラーナーヤーマ(調気法・呼吸法)
3 ムドラー(クンダリニーを覚醒させるための高度な行法)
4 サマディ(三昧)
4.アーサナ
アーサナは、「体位法」ともいわれ、坐法だけでなく、ヨーガ体操といわれるような身体の柔軟性を扱うものが含まれます。現代では、200種ものポーズ(体位)があるといわれています。
アーサナ(ポーズ)は大きくは、3つのカテゴリーに分けられます。①前屈系(体を前に曲げる)②ねじり系 ③反り系で、それぞれ均等にバランスよく行うことが重要です。
これらのポーズによって、気の通り道であるナーディーを浄化していきます。ハタ・ヨーガにおいては、気の操作はたいへん重要なもので、それは主にプラーナーヤーマ(調気法)とムドラーによって行われますが、それらを行うにあたっての、身体作りの意味がアーサナにはあります。また、坐法において、気を統御支配することも行われます。
身体の健康面についていうと、坐位を快適に、しかも不動にするための身体作りとなります。具体的には、生命維持の根本である自律神経の働きを強化し、内臓器官を調え、体を柔軟にし、骨格の歪みを直し、ホルモン分泌の正常化、免疫機能を高める、肩こりをはじめとするこりの解消など、さまざまな効果があります。自律神経やホルモンの働きは、身体だけでなく精神にも影響を与えますから、それらが正常な働きをすることで心の安定にもつながります。
また、体位法(アーサナ)を行ずることによって、正しい呼吸のあり方を学び、そのなかで、次に続くプラーナーヤーマ(調気法)への準備が、必然的に生み出されていくのです。そして、その修練のなかで、精神の集中力が養われ、瞑想を行うための心理的な基礎が養われていきます。
次のプラーナーヤーマ(調気法)の説明の前に、まず、プラーナ(気)について説明しておきます。
5.プラーナーヤーマ(調気法)
プラーナーヤーマを呼吸法という場合も多いのですが、正しくは調気法といいます。
調気法は、身体に気を集めることがポイントとなります。そのために、吸って吐くだけでなく、息を止めること(保息・クンバカ)も行います。この保息によって、身体に気を充填することができるとも考えられています。
調気法には、さまざまな種類があります。ごく基本的なものとしては、深い深呼吸に保息を加えたものがあります。そして、それから進んで、左右の鼻で、片鼻ずつ呼吸して、吸気と呼気の間に保息をするものがあります。さらには、相当に長い間、保息を行うものもあります。こうした修行によって、身体に気が満たされ、集中され、それがクンダリニーを目覚めさせることにつながります。
また、心の状態と呼吸の関係は、身体と心の関係より、より直接的なものです。穏やかな心の状態のときは、呼吸もゆったりと深い穏やかな呼吸になっています。イライラしたり、落ち着かない心の状態のときは、呼吸も浅く速くなっています。
逆にいえば、呼吸をゆったりと深い呼吸にすれば、心が穏やかになるということができ、息を制御して、心を制御することができます。
そして、呼吸法によって、深い意識にアプローチしていきます。深く長い呼吸を続け、出て行く息と入ってくる息に集中していくと、深い意識に入っていきます。心は、深く、穏やかになり、思考は、緩慢になって瞑想へとつながっていきます。
6.ムドラー
ムドラーとは、先のプラーナーヤーマ(調気法)で蓄積した気を集中させて、クンダリニー(根源的生命エネルギー)を目覚めさせる行法です。
具体的には、バンダという「しめつけ」を喉、肛門、お腹で行い、イダー、ピンガラの気道の気の流れをせき止め、クンダリニーを目覚めさせスシュムナー気道に導くものです。それを繰り返すことで、スシュムナーの詰まり、チャクラの詰まりを取り除いていきます。
気道の詰まりがなくなり、クンダリニーがスムーズに流れるようになると、全身が歓喜状態になることもあります。ただし、上位チャクラの浄化は、バンダなどの身体的な操作だけでなく、自他の区別をなくして心を浄化していくことが必要です。
そして、心の浄化が進み、中央のスシュムナー気道にエネルギーが流れることによって、心は動じない状態に安定していきます。
なお、ムドラーは、保息、バンダという身体に負担をかける行法のため、その前段階として、アーサナやプラーナーヤーマでの身体的準備が必要です。
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