マインドフルネス・ヨーガとは
マインドフルネスは、アメリカではストレスへの対処法として大人気です。雑誌「TIME」でも特集が組まれるほどの人気です。グーグルやインテルなど、ストレス対策として社員研修のメニューに取り入れる企業が増えています。
●マインドフルネスとは?
マインドフルネスとは、注意深く今の瞬間に価値判断なく気づいている意識状態のことで、客観的に自分の動作・心を見つめている状態です。
もう少し、いくつかの観点からマインドフルネスというものを説明します。
①心を開いて、今この瞬間に十分に気づいている意識状態であるということです。
私は自分の体験していることに十分意識をもって行っていないことが多々あります。マインドフルネスとはそうではなく、今この瞬間の自分の体験を注意深く客観的に意識している状態です。そのためには判断を加えずに今という瞬間の体験と向き合うことが必要です。
②あるがままを受け入れる
次に、マインドフルネスの特徴は、今のこの瞬間のものごとをあるがままの形で見る、受け入れるということです。
私たちの心は通常、ものごとをありのままに受け取るのではなく、それに好き嫌いの色づけをして、自分の気に入るものへの欲求(愛着)と気に入らないものへの排除(嫌悪)、という「とらわれ」を生じさせます。そうではなく、そのままを受け入れ認識するようにします。
③常に初めて体験するように、予断をさしはさまないで、その瞬間を体験する。
マインドフルネスは、慢性病の疼痛の軽減のためにマサチューセッツ大学医学部名誉教授のジョン・カバットジン博士が開発しました。その後、うつ病やパニック障害、不安障害などの心理療法である認知療法に取り入れられマインドフルネス認知療法として多くの人がその効果を実感しています。今では、認知療法だけでなくその他の心理療法の分野で広く浸透しています。
このマインドフルネス瞑想は、仏教の瞑想法であるサマタ瞑想、ヴィパッサナー瞑想や禅がもとになっています。
瞑想というと何か特別なものと思う方もいるかと思いますが、瞑想というものは、
現実離れした世界に誘うものではなく、日々の生活にうまく対処していくための方法です。
『マインドフルネスストレス低減法は東洋思想や技法をベースにして いるのであるが、それをわかりやすくプログラム化している。仏教は宗教であり、特別な修行法であると思い込んでいるところがあるが、仏陀は人間の悩みに取り組んだ人でありその解決法を示してくれているのであるから、仏教思想や修行法は万人のためのものであるということである。それを現代的にプログラム化 して、問題解決に役立てるというのが、マインドフルネスストレス低減法の主旨であるといえる。』
(『マインドフルネスストレス低減法』J・カバットジン著 春木豊訳 北大路書房より)
マインドフルネスストレス低減法は、東洋の叡智と西洋の理性が出合って生まれたプログラムです。
●マインドフルネスの効果
~感情・ストレスのコントロール、心に巻き込まれない自分をつくる~
1.思考・感情の脱同一化が起こる・・・自分と思考・感情を同一視しない
客観的に見つめるという意識状態によって、思考は事実とは違うことがわかってきます。また、思考は流れ去る雲のようなものであるということが実感として認識され、 その結果「単に思考に過ぎない」という捉え方になって、思考と自分を同一視することがなくなり、思考や感情を自分から話して客観的に見ることができるようになり、思考や感情に捲き込まれることがなくなります。 それによって、不安や怒りといった感情を少しずつコントロールできるようになります。
2.思考・感情の脱自動化
思考や感情は通常、自分の意思とは関係なく、自動的に生じます。それは習慣化・パターン化されたものです。その自動的な無意識的な反応に、マインドフルな意識状態は「気づく」ようになります。気づけば、自動的にならず自分でコントロールができやすくなります。つまり、自分を苦しめる習慣化された否定的な心の働きに気づき、その心に翻弄されることがなくなります。
3.リラクセーション効果によるストレス軽減
思考や感情のコントロールによってもストレスは軽減しますが、マインドフルネスによってリラクセーション効果が生じ、それによってつらい気分や感情から解き放たれる。それによって、自分の偏った認知やそれにともなった行動が修正されやすくなります。
●ヴィパッサナー瞑想
マインドフルネスは、テーラーワーダ仏教(南伝仏教)のヴィパッサナー瞑想がもとになっています。ヴィパッサナー瞑想は、自分の瞬間瞬間の心身の状態を観察し気づいている状態です。
お釈迦さまが説かれた瞑想に則った瞑想法です。
それは四念処と言われるもので、身(体)・受(感覚)・心・法(現象)に対する観察です。
* 身念処:そのときどきの身体の状態に気づきをもって見守る
* 受念処:そのときどきの感覚に気づきをもって見守る
* 心念処:そのときどきの心の状態に気づきをもって見守る
* 法念処:現象・ものごとを気づきをもって見守る
という観察です。経典には細かく観察法が書かれています。
通常、マインドフルネスの訓練としては、四念処の身念処のはじめである「呼吸を見つめる瞑想」を行います。この呼吸を見つめる瞑想は、お釈迦さまが行った「アーナーパーナ・サティ(入出息念)」という瞑想です。
●マインドフルネス・ヨーガとは
今までマインドフルネスということについて説明してきたことで、マインドフルネス
ということはおおよそ理解していただけたと思います。
マインドフルネス・ヨーガとは、ヨーガを行いながらのマインドフルネス瞑想という
ことになります。
アーサナ(ヨーガの体操)をしながら、体のどこにどんな感覚があるか、あるいは体
がどういう状態にあるのか気づきをもって行います。
ヨーガを行いながらの心理療法ということです。
最近、「気の流れをよくする」ことが、うつ病などの改善につながるということも言
われています。
ヨーガは、気の流れを良くしますから、ヨーガの効果とマインドフルネスの効果の相
乗効果が期待できます。
また、じっと座ってマインドフルネス瞑想を行うことは慣れない人にとってはやりに
くい面もあるかと思いますが、ヨーガによって体を動かしながら行うことで、マイン
ドフルネスが行いやすいという利点もマインドフルネス・ヨーガにはあります。