ヨーガと心理学

1.ヨーガとは?

大乗仏教の代表的派として中観派と唯識派という大きな派があります。唯識派とは、唯識ヨーガ行派といわれます。

唯識は仏教の深層心理学と言われていて、その派の名前からもわかるようにヨーガの行を通じて得た瞑想体験の中から心の解明をしていきました。このように、心の解明とヨーガ行というのは関連しています。


ヨーガ・スートラに

「ヨーガとは心の働きを止滅することである」(1・2)

あるいは訳し方によっては

「心の作用を統御することである」

と書かれています。

そしてそのための方法として、ヨーガ・スートラでは「ヨーガの八部門」をかかげています。

「ヨーガの八部門」は、瞑想の極致であるサマディに至る手順です。アーサナ、プラーナーヤーマをはじめとするヨーガ行は瞑想のための準備なです。ヨーガ行という身体操作を通じて心の統御をし、瞑想そしてサマディに至る道です。


☆真の自己と囚われの自我意識

私たちは、日々様々な束縛の中で苦しんでいます。

それでは何故人間は、そのような束縛のもとで苦悩しなければならないのでしょうか?

ヨーガでは、自我は偽りの自分であり、本来の自己とは区別しています。真の自己は、純粋意識とも呼ばれる何の制限、束縛のない意識状態です。自我意識というのは、「私」という枠に囚われた束縛された狭い意識です。私たちが普段、手を焼いている心の働きはこの自我意識です。自分で勝手に自分を束縛して、心のコントロールを失い、自縄自縛となって苦しんでいます。

私たちは、本来自由で幸福ある真の自己を見失って、真の自己ではない虚偽の自我意識に自分を同一化させて自我意識こそ自分であると思っています。

この私たちを日々翻弄している自我意識をコントロールして、その働きを止滅することによって真の自己に気づいていく道がヨーガです。

ヨーガはその具体的方法を 数千年をかけて実験し、編み出してきました。

身体の鍛錬からはじまり、呼吸の調御、心へのアプローチと段階的にすすめていくその方法は合理的、科学的です。身体からのアプローチというやりやすい段階から徐々に心の深部にアプローチしていく方法です。

本来の自己に至るために、その発現を阻害している偽りの自我意識を取り除く作業です。

それは、真の自分探しのスピリチュアルな旅です。太陽を遮る厚い黒雲を取り除けば、そこには燦々と輝く太陽があるのです。私たちは、その黒雲を自分であると錯覚して苦しんでいると言っていいでしょう。

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