8.日本社会の大変動の80年周期説
第5代気象庁長官だった高橋浩一郎氏(1913~91)は、その著書『気候変動は歴史を変える』(1994年刊、共著、丸善)のなかで、日本は80年ごとに大変動に見舞われると指摘した(※下記参考文献1)。例えば、1620年の江戸幕府の確立を起点と考えるなら、1700年は享保(きょうほう)の改革、1780年は寛政(かんせい)の改革、1860年は幕末、1940年の戦争の時代ということであり、詳細は下記の通りである。
(なお、下記参考文献1は、2018年に公表されたもので、2020年の大変動を予期しているが、当然新型コロナ問題を予見はしていない。下記の表の2020年代の部分は、私が付け加えたものである)
中心年 |
日本 |
海外 |
1620年 |
1615年:大坂夏の陣→豊臣家が滅び江戸幕府が固まる |
1620年:宗主国スペインの金融危機で伊ジェノアの低金利が終焉 |
1700年 |
1703年:江戸大地震 |
1707年:イングランドとスコットランドが合併 |
1707年:宝永大地震、富士山噴火→元禄時代の終わり、享保の改革へ |
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1780年 |
1783年:浅間山噴火、天明の大飢饉→寛政の改革(1787年)へ |
1775年~83年:米国独立戦争 |
1783年:アイスランド・ラキ山噴火、1789年:フランス革命 |
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1860年 |
1853年:黒船来航、1854年:安政東南海地震、1855年:安政江戸地震 |
1853~56年:クリミア戦争→ロシア農奴解放など近代化 |
1868年:明治維新 |
1861~70年:イタリア統一戦争 |
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1861~65年:南北戦争→奴隷制廃止 |
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1870~71年:普仏戦争→ドイツ統一、フランス第三共和政に |
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1940年 |
1931年:満州事変、1937年:日華事変、1941~45年:太平洋戦争 |
1933年:ルーズベルト政権、ヒトラー政権が誕生 |
1939~45年:第二次大戦 |
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1950~53年:朝鮮戦争 |
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2020年? |
2011年:東日本大震災 2020年:新型コロナパンデミック |
2020年:新型コロナと米中対立 2022年:露のウクライナ侵攻と冷戦 |
※付記
①80年周期といっても、実際にはプラスマイナス10年くらいの幅・期間があり、80年とは、その中心くらいと考えるべきという見解がある。
②享保の改革(1716年)、寛政の改革(1787年)、幕末も、天変地異が関係している。享保の改革では、富士山の噴火と宝永地震(ともに1707年)、寛政の改革では天明の大飢饉(1783年)が、災害の影響で逼迫した幕府財政を再建する政策に結び付いた。幕末も、1854年に安政東海地震と安政南海地震、その翌年に安政江戸地震が発生し、これに黒船来航が加わって、同様に幕府の財政も破綻している。
③1460年代の応仁の乱(1467年)、1540年代のポルトガル商人の種子島漂着と鉄砲伝来(1543年)も付け加えると、「80年周期の大変動」はさらに遡ることができるという見方もある。
※参考文献1:https://business.nikkei.com/atcl/report/15/226265/092600296/
《出典:2023年GWセミナー特別教本『覚醒の道:仏教の幸福哲学 400年周期の仏教改革の開始』第2章より》