【3】ひかりの輪の「輪の思想」
●輪の思想:万人万物が平等で一体
ひかりの輪の中核の思想は、「輪の思想」です。
それは、「輪」という言葉が象徴するように、「万人・万物が、輪のように一体であり、等しく尊い」とする世界観です。万物平等一体の思想です。
では、この思想の意味合いを説明する準備として、まず、現在の社会の問題・苦しみの分析をしておきましょう。
●現代社会:拡大と競争の幸福観の行き詰まり
現代は、「今より、もっと」、「他人よりも、もっと」と、財物や名誉・地位を求め、幸福になるという考え方が主流です。
財物や名誉・地位に恵まれることが幸福で、そうでない者は不幸として、自分と他人の区別し、勝ち組・負け組などに、人を二分化することになります。お金と勝利、拡大と競争を重視した経済競争社会です。
しかし、その現代社会は、行き詰まりの様相を示しています。
バブル崩壊の後の長い経済停滞、日本に限らず、欧米にも広がる財政赤字・景気低迷、失業者、自殺者、鬱病を含めた精神疾患の増大など。
多くの人が、果てしない拡大と競争を求める資本主義が、人を本当に幸福にするのかを疑い始めています。
●行き詰まりの根本的な原因は何か
それは、なぜでしょうか。その理由を仏教開祖の釈迦牟尼は予見していました。
まず、「今より、もっと」、「他人よりも、もっと」と求めても、欲求には際限がないために、満ち足りることはありません。
例えば、統計的な調査には、日本ぐらいの所得水準に到達すると、所得が増大しても、人が感じる幸福感は必ずしも増えないとするデータもあります。
もはや日本人は、お金では幸福が買えない状態に達したのかもしれません。
一方、得られない場合は、苦しみますし、いったん得てしまうと、以前は必要なかったものさえ、それを失うと苦しみが生じます。そして、そのように皆が求め合う中では、当然、他との奪い合いが生じ、恨み・辛み・妬みの苦しみが生じます。
例えば、自殺は、統計が始まった1890年以来、2000年代の今現在が、最も多くなっています。今は、バブルの崩壊後の問題があるとはいえ、途上国時代や敗戦直後よりも多いのです。年間3万人、未遂を含めると数十万人となっています。
鬱病は、この10年で倍増し、数百万にのぼります。体の病気は、医療技術の進歩で、先進国は少なくなりましたが、心の病は途上国と違いがないとも言われます。
物は豊かな社会の中で、心が病んでいます。
無数の人が、日常生活に強いストレスを感じています。
こうして、私達は、今までの拡大と競争一辺倒の幸福観の転換、ないしは、少なくとも、幸福観の多様化が必要な状態に来ているのではないでしょうか。
●ひかりの輪:「感謝と分かち合い」の幸福観
そこで、ひかりの輪は、「新しい幸福観」を提唱しています。
それは、「感謝と分かち合い」による幸福です。
この感謝と分かち合いが深まると、落ち着いた、大きな、温かい心が生まれ、それによる幸福を感じることができます。
さらには、心が静まることによって、直感力を含めた智恵が増大してきます。
感謝と分かち合いによる幸福と比較すると、従来の「今より、もっと、他人より、もっと」とお金や勝利を求める幸福観は、不満と奪い合いに基づく幸福ということができます。
それは、その裏側に、満ち足りない・求めても得られない・得たものを失う・奪い合うといった苦しみがあることは、前に述べました。
感謝と分かち合いは、そういった苦しみがなく、落ち着いた満ち足りた状態をもたらすものです。仏教では、仏の慈悲の境地と言われるものです。
そして、この新しい幸福感を得るための鍵となるのが、今までとは違った世界観=輪の思想なのです。
●苦楽・優劣・自他を極端に区別している
その説明をする前に、従来の「不満と奪い合いの幸福観」は、どういった世界観を持つものでしょうか。
① それは、まず、財物や名誉地位といったものを喜びと考え、それが少ないことを苦しみと考えます。
② 次に、自分と他人を分け、自分だけに沢山の財物や名誉・地位を求めます。すなわち、自分と他人の幸福は別のもの、奪い合いと考えます。
③ そして、人を勝ち組・負け組、優れた者・劣った者を分け、皆が勝ち組を目指して競争します。しかし、実際に皆が勝ち組になれることはあり得ません。
こうして、幸福と不幸(楽と苦)、優と劣(善と悪)、自と他(の幸福)というものを極端に分けているのです。これを二元論と呼ぶ場合があります。
●ひかりの輪の一元論:輪の思想
これに対して、感謝と分かち合いの幸福感では、一見して別々に見える二つのもの、すなわち、楽と苦、優と劣、自と他といったものが、実際には全く別のものではなく、輪のように繋がっており、表裏一体の側面があるという思想に基づいています。これを一元論という場合があります。
まず、苦と楽については、先ほども述べたように、楽の裏に苦しみがあります。
そして、よく考えると、苦しみの裏にも恩恵があります。これが苦楽の輪です。
また、優と劣については、どんな人にも欠点はあり、どんな人にも長所はあり、さらに言えば、長所の裏には短所、短所の裏には長所があります。
例えば、勝ち組だと奢れば、慢心で失敗し、負け組の経験を活かせば、他の苦しみを理解する人間になる可能性もあります。これが優劣の輪です。
さらに、自と他については、人は自分の力だけで生きているのではなく、多くの他者・万物に支えられて生きています。
また、蜘蛛の糸が説くように、本当の幸福とは、自分だけが幸福になっても得られるものではなく、他の幸福と共に得られるものです。これが自と他の輪です。
そして、これらの苦楽、優劣、自他の輪を含め、万人・万物・森羅万象についてしっかりと分析すると、「万物が一体であり、等しく尊い」という世界観が出てきます。これを「輪の思想」と呼んでいます。
●輪の思想は、日本の根本精神、世界共通のシンボル
聖徳太子の十七条憲法に説かれた「和の思想」は、日本の精神・文化の中核・根本とされますが、この和の思想は、ひかりの輪の「輪の思想」と一体不可分なものです。
具体的には、万人を平等一体とみる輪の思想は、縄文時代以来の日本の根本精神です。そして、それに基づいて、聖徳太子の和の思想が出来たと考えられます。
さらに、心理学者の研究によると、世界の諸宗教・諸文化に共通するシンボルとして、輪・円があります。
仏教の「法輪」、大乗仏教の曼荼羅、禅の円相、道教の太極図、古代の遺跡物などなどです。これらの詳細は、後に述べるように、このHPに掲示されている特別教本に書かれています。
●「輪の思想」は多面的な内容を含む
なお、詳しく言えば、ひかりの輪では、「輪の思想」には、具体的には、三つの側面があるとしています。
今お話ししたのは、その中で一番重要なものであり、三つの悟りのための教えとして、「三悟の輪の法則」ないし、「三悟の一元法則」と言います。
これに加え、「三縁の輪の法則(三縁の一元法則)」、「三性の輪の法則(三性の一元法則」といった教えがありますが、ここでは説明を省略します。
また、先ほど行った「三悟の輪の法則」の説明もごく概略的なもので、実際には、もっと深み、広がりのある法則です。これらの法則の詳細に、ご関心があれば、このHPの「思想と実践」のコーナーに掲示されている「特別教本」をぜひご参照ください。