ジャーナリストA氏
以下は、雑誌の特派員としてフランスに長期にわたって滞在した経験を持ち、フランスに関する知見を有するジャーナリストA氏が、1年近くにわたって取材目的のために「ひかりの輪」の活動に参加して執筆し、公的機関に2011年末に提出した意見書の一部です。
フランス議会が定めたカルト基準に照らしても、ひかりの輪はカルトとは言えないと結論づけています。
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意見書 『ひかりの輪』とフランス共和国のセクト概念・構成要件
(中略)
さて、公共における非宗教性・政治と宗教の分離というライシテを世界でもっとも厳格に運用しているフランス共和国は、オウム真理教事件や世界や自国のセクト(カルト)による複数の凶悪な事件を受けて、国民議会が調査委員会を設置し(アラン・ジュスト委員長)、1995年12月に『フランスにおけるセクト』という報告書を採択いたしました。セクト(カルト)というものは何であるかを厳密に定義した上で、その構成要件とは何であるかを厳密に考察しています。
報告書はセクトの概念を次のように解説しています。
「(セクトとは)精神の不安定化を狙った操作で、メンバーからの無条件の忠誠、批判精神の低下を誘い、一般社会にある価値観(倫理的、科学的、公民的、教育的)との断絶をもくろもうとする集団で、これは個人の自由、健康、教育、民主制度に危険を与える。この集団は哲学や宗教、精神医療といった仮面を被ることで、その裏にある権力の獲得や支配、メンバーからの摂取といった真の目的を隠蔽している」
こうした点を踏まえて、調査委員会がフランス内務省の基準を参考にしながら、セクトの構成要件として挙げたのが、次の十項目です。
①精神の不安定化
②法外な金銭要求
③住み慣れた生活環境からの断絶
④肉体的損傷
⑤子どもの囲い込み
⑥大なり小なりの反社会的な言説
⑦公共の秩序に対する錯乱
⑧裁判沙汰の多さ
⑨通常の経済回路からの逸脱
⑩公権力へ浸透とする企て
ひかりの輪はセクトの構成要件の十項目にあたるか、取材を基にした私見を述べたいと思います。
まず、精神の不安定についてですが、ひかりの輪は心身が一体となった健康を追求して、説法やオフ会(※引用者注:懇親会のこと)の前には軽いヨガをやり、会員には『エンライトメントヨガ』や『ナチュラルヨガ』といった精神的健康を与えるを奨励しています。かつてのオウムのような肉体を酷使するヨガではなく、精神的やすらぎと快活さをもたらすソフトなヨガでありました。これにつきましては、『○○○○』という雑誌が1日ヨガ体験して、ひじょうに、幸福感を得られたという記事を過去に掲載しています。
法外な金銭要求につきましては、入会費一万円、説法一回について参加費が1000円で、極めて、妥当な金額でありました。
住み慣れた生活環境からの断絶を会員に強いることは行われておりませんでした。会員はそれぞれ自分の自宅から説法会に通う方がほとんどでありました。
肉体的損傷につきましては、過去に死者も出た体を酷使する修行をオウムがしていたため、今ではそのような手法は戒める傾向に有り、安全性には十分な配慮がなされているように見受けられました。
子どもの囲い込みは、私が見た限りありませんでした。
反社会的な言説につきましては、入会する時に、麻原回帰やテロ肯定のような思想を持たれる方にはご遠慮いただく旨の説明がございました。
公共の秩序については、護る努力を不断にしており、地域住民との対話・相互理解をひかりの輪は積極的に試みていました。
裁判沙汰の多さという点では、ひかりの輪から法外な賠償請求をするといった、あるいは批判者に対して訴訟を起こすという旧オウムのような真似はしておりません。
通常の経済回路からの逸脱については、税務署にご確認なさるのがよろしいかと思います。
公権力へ浸透しようとする志向は感じられません。団体規制法の延長を申請するのは、世田谷区議会でありますが、区民の権利として、議員一人、一人に自分たちの活動を理解するように陳情することもできたでしょうに、そのような働きかけもありませんでした。
セクト(カルト)の定義にあるように、その危険性は「個人の自由、健康、教育、民主制度に危険を与える」ことでありますが、上記の陳述したとおり、ひかりの輪の危険性はきわめて低いと考察いたします。
(中略)
最後に結論めいたものになりますが、セクト(カルト)規制が厳しいフランス共和国の基準に鑑みれば、ひかりの輪はセクト(カルト)の概念・構成要件からはかけ離れているといえます。